KDA企画

木庭和彦さん第2弾インタビュー


木庭和彦さん

「トライアスリート木庭和彦さんに聞いてみた:第2弾」       2020年7月26日公開

前回、好評頂いた木庭和彦さんの第2弾インタビューをさせて頂きました。前回のお話の中で気になるその来歴や進んできた道、そこから見えてくるいろんなことを少しでもご紹介できればと思います。



それでは木庭さん、宜しくお願い致します。



Q.高校を決める際にどんなことを考えられましたか?

木庭:私の場合は少し特殊かもしれません。

私が母校となる鳥取県立由良育英高校(現在の鳥取中央育英高校)を知るきっかけとなったのは、陸上競技を始めた中学1年生の冬でした。

全国高校駅伝をテレビで観戦していた際に、先頭を走る学校は当時から全国的に有名で活躍していた名門・西脇工業高校でしたが、私の興味を引いたのは、その西脇工業高校と肩を並べて走る、長髪でピンクとブルーのユニフォームを着用した選手でした。

当時は中学、高校でのスポーツと言えば丸刈りは当たり前の時代でした。

その後はその高校について調べたり、翌年の全国高校駅伝を観に行ったりする中で、次第に「こんな自由で伸び伸びとした雰囲気の学校で陸上競技に取り組みたい」と思ったことや中学の短距離、長距離の先輩が1名ずつその高校に進学した事から、やがて志望校としての想いが固まっていきました。


Q.兵庫県とは違う地区でしたが、大会などでも違った雰囲気でしたか?


木庭:鳥取県で山陰地方という事もあって、生徒数が少なく、学校数も少ないですね。県内で30校くらいだったと記憶しています。

その中で陸上競技に力を入れている学校となると、東部の鳥取市方面、中部の倉吉方面、西部の米子方面など、各方面に数校と実質限られていました。もちろん個人的に強い選手はいました。

兵庫と印象が1番違ったのは組数でしょうか。高校総体は県大会から始まりますが、5000mの予選の組数は4組くらいだったと思います。


Q.組数や県大会からだと取る戦略などは変わってきますか?


木庭:確実に中国大会に進まないと行けないので、やはり決勝に合わせる力が必要だと思います。兵庫と違って地区大会を経ていないので、みんな調整がしっかりと出来ています。そのような仕組みだと、強く無い選手でも調子が合い、速く走れる事があります。

楽に次に進みたいと考える反面、確実に中国大会に残れる、ある程度のスピードを意識してレースを展開する必要があると思います。


Q.レースが多いと消耗戦に強い方が優位ですよね。逆に少ないとピーキング能力が大事になりますね。その高校時代の経験が進路決定にも影響がありましたか?


木庭:近畿や中国など各地区大会同じだと思いますが、インターハイの出場有無が大きくその後の進路に影響するのではないでしょうか。

私の場合は2年、3年と県大会で3000m障害で優勝出来ましたが、インターハイには出場出来ていません。

中国大会には待ちタイム2位で現地入りしましたが、結果は7位。(6位までがインターハイ出場)

私の手に届きそうな所でゴールした6位の選手まではゴール後、複数の大学のスカウトが駆け寄っていました。

しかし私の所には誰も来ませんでした。

良い、悪いは別として、自分の人生が変わった瞬間だったと今でも思います。


Q.大学は自分の希望のところに行かれたのですか?


木庭:箱根駅伝に出場する学校数校と話をする機会が持てたのですが、監督が私の適性距離から関東に進学せず、関西に残るようにと進路を示して下さいました。

大学に進学が決まってから聞いた話ですが、監督は私が関東に行き、その後、関東で就職すれば、一人息子なので両親の面倒を見る者が居なくなるとも考えて下さっていたそうです。

個人的には進学先として頭に無かった大学でしたが、推薦枠を用意して頂け、結果的に学費の面でも両親の負担を軽減出来たのではないかと思います。


Q.木庭さんの適性距離はどの辺りにあると思われていましたか?


木庭:高校の時は5000mくらいかなぁと思っていましたが、どうなんでしょうか。関西の大学では出雲、全日本大学駅伝出場を目標に年間計画を組んでいました。全日本の予選はチーム10人の10000mのタイム上位8位までの合計で本戦出場が決まるので10000m主体のトレーニングになります。

出雲の出場枠は、関西学生駅伝の上位2校でした。関西学生駅伝も10km前後の区間がほとんどでした。そのような環境で全日本では2回生で4区、3回生で1区を、関西学生駅伝では2?4回生で最長区の6区14キロを任されました。

適性距離が正しいかは別として、限られたメンバーで駅伝に臨むことが求められていました。

800mで全日本インカレに出場した先輩は、全日本では10キロ近くを任されていました。


Q.そういった環境の中でトレーニングはまとまってされるのですか?それとも個別で違っていましたか?


木庭:大学では朝練、午後練と集合はありました。

各週のメインメニューは予め決まっていたので、メインメニューの間の日は各自でスピード練習に備えた練習を行っていました。


Q.今、トライアスロンをされてるならスタミナ充分だと思うのでマラソンまで適性範囲だと思っちゃうのですが、ランニングにおける適性とは別物ですか?


木庭:マラソンは数回走ったことありますよ。

市民マラソンでしたが、初マラソンが2時間30分。2時間20分台で走った事もあります。

琵琶湖毎日にも出場しましたが、坐骨神経がひどく、ペースが上がらなくてDNFになってしまいました。

高校の時から長距離を走ると腰痛と、内腿に痺れを感じることが多くありました。社会人になってから検査を受けると、椎間板ヘルニアと、坐骨神経である事が分かりました。

競技を続けている中では整形外科よりも、整骨院やマッサージに頼ってしまうところがあったので、痛みを正しく理解すべきだったと後悔しました。

こういった健康状態も適性の一つではないでしょうか?

トライアスロンでも私の取り組んでいたショートディスタンスでは、スイム20分前後、バイク60分前後、ラン40分弱の合計2時間前後で終わってしまいますし、途中で動きが変わるので、使う筋肉も異なります。

マラソンのようにじっと我慢する局面は少ないように感じていました。

バイクには給水ボトルを積んでいますし、補給食を摂ることもできます。
マラソンほど低血糖や脱水症状になってフラフラになる事は無かった様に思います。


Q.マラソンのように同じような動作で負荷を掛け続けるのと比べ、トライア
スロンはある種のクロストレーニング的な要素がある感じでしょうか?


木庭:クロストレーニングとして考えてトレーニングして良いのではないでしょうか。

例えばランニングで心拍数をマックスまで上げようと思うと、300m?400mをダッシュしなければいけませんが、水泳なら100mのダッシュで代用出来ます。

また、足に故障を抱えていて、陸上でインターバルをする事が難しい場合でも、バイクを使ってランに近い動きが出来ると思います。

スイム、バイク、ラン共に体幹を使いますが、各種目、使い方が違うので、好循環になるのではないでしょうか。


そういった意味でもランニングに取り組む方々にとってトライアスロンとの親和性はありそうですね。


木庭:そうですね。全て有酸素運動なので、気分転換に力を入れる種目を変える事もあります。

どんなスポーツも生活習慣が結果や記録に結びつくと思いますが、トライアスロンでも日常生活の中でトレーニング時間を確保しなければなりません。

ランニングトレーニングに加えて、
スイム=プールに行く計画、習慣づくり、
バイク=数時間のトレーニング時間の確保、コース計画や天候の確認など、生活習慣や計画性が、直結する部分があると思います。


過酷なスポーツのイメージですが、そのスポーツに取り組むことで「健康的な生活」
や「コンディション」を意識するようになりそうですね。


木庭:そうですね。トライアスロンの大会に出場を決めてから計画を組んでいくと、まず生活習慣が改善されてると思います。

マラソンでも同じだと思いますが、晩酌で『この一本をやめておこう』とか、明日は早朝からラン(バイク)だから、早めに休もうとか。

怪我をしていても他の種目のトレーニングが出来るので、生涯スポーツとして向いていると思います。

バイクとランは場所を選ばないので、取り組みやすいですしね。


故障しないのが一番ですが、してしまった時もそれぞれのトレーニングに取り組め
る機会もありそうですね。



おわりに


今回も多くのことをお伺いさせて頂きました。今のように気軽に連絡を取る手段がない中で、違う地域に進学するとなかなかお会いする機会も一緒に走る機会もお話しする機会もなかなか持てませんでした。

今回このような機会を頂き、改めて木庭さんのお話しを伺えて良かったです。

もっともっとお伺いしたいこともありますし、このように多くの知られざる逸話やエピソードが地域や多くの方々がお持ちだと思います。

そういったお話しや知見を掘り起こし、残していくこと、シェアしていくことが生涯スポーツとしても、地域活性化や地域の貴重な財産としても大切だと考えます。

今回も地域活性化事業、生涯スポーツ事業の一環として実施しました。


インタビュアー:KRC代表 神屋伸行